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Tidbits stream 13 学際的診断 

[2026.01.30]

 儒教文化は、ある才能に特化しひたすら磨き上げることよりも、森羅万象の本質を捉えることを重要視します。この概念と対峙するのが西洋の分業、すなわち細分化という発想で、この細分化が産業革命を促してきました。

 東洋医学は、儒教文化の影響が強かった5-6世紀に中国から伝来し、ヒトの心身を「丸ごと全体的に」捉えて異常を見いだし、「自然治癒力」を最大に発揮させます。しかし、江戸時代からオランダやドイツの西洋医学が導入され、明治には西洋医学を学んだ者のみに医師免許が与えられました。東洋医学は西洋医学に比べてエビデンスを得にくく、一般に理解されにくいため、日本の医療は西洋医学をベースに細分化され、現在、世界有数の高いレベルを誇っています。

 整形外科学は今から100年前に外科学から分離し、今現在、脊椎外科、手の外科、足の外科、関節外科、外傷外科、腫瘍外科、小児整形、スポーツ整形、リウマチ医などの専門分野に細分化されています。当然、各分野の知見や技術は向上しましたが、人間はすべてがつながり連動していますから、細分化されすぎれば、それぞれに跨る分野が手薄になります。

 現在、多くの大学や研究機関では「学際的」 研究が推奨されています。「学際的」とは、文系と理系の知識を統合させ,新たな研究で知見と可能性を見出すという意味です。 そして近年、医学の分野でも「学際的」な考え方が重要視され、これはまさに西洋医学から東洋医学的な考え方に立ち戻る流れといえます。

 整形外科領域内の専門分野だけでなく、整形外科疾患は脳神経外科・内科、内科・外科、血管外科、皮膚科、泌尿器科、膠原病科、血液内科、耳鼻科、眼科、精神科などと関連することがあり、他科疾患名や他科症状から整形外科的疾患の診断が可能に、またその逆もあります。ある症状に対して・・科を受診するも整形外科受診を勧められる場合や、どこに行けばいいか分からずとりあえず整形に来る方は多く、他科疾患との鑑別は整形外科医の重要な仕事の一つです。その際、学際的観点に立った診断と治療は非常に有用なツールで、何らかの症状があるにも拘わらず、レントゲンだけで「特に異常はありません」と言い放つのは、学際的観点に乏しい対応といえます。

 では、具体的な例を提示します。

<脳神経系>

・パーキンソン病(身体の動かしにくさ)、脳梗塞(運動麻痺)、小脳疾患(運動障害)、ギランバレー症候群(筋力低下)

<心・血管系>

・大動脈解離(背部痛)、狭心症(前胸部痛)、ナットクラッカー症候群群(左腰痛)、下肢静脈炎(下肢炎症)

<呼吸器系>

肺炎、胸膜炎(片側背部痛)、慢性閉塞性肺疾患(骨粗鬆症)、肋骨骨折(胸背部痛)

<腹部骨盤系>

・内臓器癌(骨腫瘍)、鼠径ヘルニア(股関節部痛)、腸穿孔(交通外傷)

<皮膚科系>

・帯状疱疹(神経痛に類似)、乾癬、掌蹠膿疱症(関節炎)

<泌尿器系>

・腎結石、尿管結石、尿路感染症(背部痛)、慢性前立腺炎(陰部、肛門周囲部痛)

<膠原病科>

・関節リウマチ(関節痛)、リウマチ性多発筋痛症、多発性筋炎(筋肉痛)

<血液内科>

・多発性骨髄腫(骨折)、悪性リンパ腫(骨転移)、筋無力症(脱力)

<耳鼻科>

・めまい、ふらつき(転倒骨折)

<眼科>

・多発性硬化症、視神経脊髄炎(しびれ、運動障害)

<精神科>

・身体表現性障害、抑うつ(身体の痛み)

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