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Tidbits stream 2 ~ EBMとNBMから“腰痛”を考える

[2025.12.16]

私が医師になったころは日本全体が好景気で、現在ほどの超高齢化社会ではなく、比較的みんなが同じ方向を向いていました。そして、医学部では「根拠に基づく医療:EBM(Evidence Based Medicine)」をベースに教育、指導されました。これは基礎、臨床研究結果から治療法の妥当性を検証し、医療の質を高める手法で、「根拠」、「統計手法」、「科学性」がかなり強調された考え方です。そのうちすべての疾患にガイドラインを作る動きが出て、それから外れた考えは「それってあなたの感想ですよね!」と一蹴される時代となりました。

時代が変わり、失われた30年と言われる日本の不景気、超高齢・超少子化社会が問題になり、医療では「EBM」への偏りが問題視され、「NBM」が注目され始めました。これは「物語りと対話に基づく医療:NBM(Narrative Based Medicine)」で、患者の病気にもストーリーがあり、その患者の病気にかかわるストーリーをよく聴き対話することが重要という考え方です。

そして、近年の多様性という考え方は医療の受け方にも変化を与え、セカンドオピニオンの考えが定着したことや、SNSで病気に関する発信が増えるなどネット検索能力が上昇し、それまで”てっぱん”だったガイドラインですら一つの考え方になりつつあります。

整形外科の守備範囲はかなり広く、それまでの臨床経験や基礎・臨床研究の有無、人生哲学によって、医師の技量には”ばらつき”が生じます。明らかに手術などが必要であれば専門医に紹介しますが、ありふれた症状であれば、注射、リハビリ、痛み止め、シップなどでお茶を濁されることが多いのが実情となっています。

たとえば、よくある“腰痛”は、整形外科疾患の中でも一番奥が深い症状で、いまだに私も一つ一つの症例から学んでいます。

下図のように、疼痛のタイミングや部位、疼痛範囲、圧痛の有無によって原因が異なり、姿勢や体勢、温度の変化で悪化したり軽快したりします(骨折や感染、癌などの転移などには適応不可)。

A) 腰関節由来の疼痛:腰を反らすと小さな範囲が痛み、押すと痛みがある

B) 腰椎椎間板由来の疼痛:前屈、中腰で痛み、反らすと楽になり、押しても痛くない 

C) 腰筋肉由来の疼痛:体を動かすと全体的に痛く、★部は押したら痛い

D) 仙腸関節由来の疼痛:座位から立位時に痛み、運動などで温まるとやや軽減し、押したら痛い

痛む部位はいわゆる“腰”ですが、レントゲン、MRI、CTの画像だけでは、これらのA)~D)の違いを区別できません。画像や血液検査だけではなく、痛みのストーリーを聞くことで、腰痛の原因に近づくことができ、治療法を提案できるのです。このストーリーを聞くことがまさに近年重要視されている「NBM」で、診断後の治療法や投薬内容は、年齢や日常生活状況、就労状況、経済的状況なども考慮されるべきです。

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