Tidbits stream 9 老化への抗い方
患者さんから聞く、整形外科医師から言われた酷い言葉のNo1は、「歳のせい」のようです。確かに人間誰しも歳には勝てず、軟骨も次第にすり減り、姿勢も悪くなり、筋・骨も減少します。巷では軟骨再生、シワやくすみ除去、筋肉増強・・・などなど、耳障りの言いサプリや施術の広告であふれています。また最新研究を応用した医療が自費診療で提供され始め、変形性膝関節症に対する自己タンパク質溶液(APS)再生治療は片膝30万円もかかりますが、その効果は約12ヶ月間で永久ではありません。すなわち、古今東西、不老不死の薬はないのです。では、我々は老化に対して“座して待つ”しかないのでしょうか?
世界から老化予防に関する学術論文がたくさん報告され、中でも“運動”の効果は高いと思われます。それを根拠に整形外科領域だけでなく様々な診療科にまたがって、”サルコペニア” と ”フレイル” という言葉が注目され始めています。
”サルコペニア” は、筋肉量の減少が筋力や身体能力の低下を引き起こしている状態で、歩く、立ち上がるなどの日常生活の基本的な動作に影響が生じ、介護が必要になったり転倒しやすくなったります。 一方 ”フレイル” は、加齢による身体的機能の低下や社会とのつながりの減少が原因で、身体能力のほか、精神的、社会生活面に衰えがみられる状態です。すなわち”サルコペニア”も”フレイル”も、生活の質を落とすだけでなく、いろいろな疾患の重症化や合併症を引き起こし、最後は生存期間に影響します。また長時間座って過ごすことは、様々な疾患を引き起こすリスクが高く、それは喫煙にも匹敵するほどですから、”座して待つ”は危険なのです。
よって、自分に合った運動をコツコツと継続し、自分なりに “老化に抗う” ことが重要です。また同じ運動量でも小分けすることによって身体への負担が減りますし、杖や押し車などを上手に利用することも重要です。足腰が悪い方に杖や押し車の使用を助言すると、「年寄りみたい」と拒否されるケースがあります。しかし、長い目で見ると、杖や押し車を使用せず、痛みを我慢して運動量が少なくなるよりも、杖や押し車を利用して運動量を維持するほうが、筋肉量と活動性が保たれることが分かっています。よく患者さんに運動をするよう説明すると、「犬の散歩をしているから大丈夫」「庭仕事や家でゴソゴソしているから大丈夫」と言われますが、犬の散歩はあくまで犬の運動、庭仕事や家でゴソゴソは作業であり運動ではありません。
100歳前後で日常生活もほぼ自立し、受け答えもしっかりされている方に共通していえることは、食事がしっかり摂れている、いっぱいしゃべる、姿勢がいい、日々の生活のルーティーンを守っている人です。そのような方は必然的に若く見えます。これは見た目と言うものが、体内のコンディションを如実に映し出す鏡で、見た目が若いということは、病的な老化の進行が遅いということです。よって、見た目が若い人のほうが、長生きといえます。
以上から“老化への抗い方”は、運動、食事、コミュニケーションと、当たり前の結論に落ち着きます。より若いうちに意識を高くもって実行することがポイントで、決して近道はありません。サプリや流行りの情報に惑わされずに、自分に合った運動習慣を工夫して身につけ継続する、バランスのいい食事をしっかり摂る、いっぱいしゃべることをコツコツと行い、楽しくい生きていきましょう。整形外科医の仕事は、まさに、そのお手伝いだと私は思っています。
