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Tidbits stream 4 手術をEBMでなくNBMで考える

[2025.12.19]

整形外科疾患における手術適応は、この30年あまりで大きく変化しています。その要因は少なくとも以下の4つに絞ることが出来ます。

  • 平均寿命の上昇
  • 周術期管理技術の向上
  • 手術機器の改良と手技向上
  • 医療における利潤追求

1)30年前、80歳を過ぎれば手術を勧めることは基本的にありませんでしたが、近年、80歳代は当たり前で、場合によっては90歳代でも手術を行う場合があります。それだけ元気な高齢者が増えたと言えるでしょう。しかし高齢化の反面、認知症の方が増え、術後せん妄や入院期間中に認知症が悪化し、せっかく手術を行ったのに効果不十分なケースが散見されます。また高齢者の趣味や活動が拡大し、昔は日常生活を送るための手術だったのが、現在では趣味や生き甲斐のための手術も多くなっています。

2)手術前後の周術期管理技術の向上で、持病がある患者さんでも安全に手術が出来るようになりました。

3)近年の医療機器技術発展と手技向上には目を見張るものがあり、今まで医師の勘に頼っていた手術が、ロボットのアシストで、簡便でより安全に行うことが出来るようになっています。

4)日本の景気低迷、人口減少とともに、医療業界は今や斜陽産業化しています。医療材料購入時の消費税や物価が上がっても、公定価格の医療費はほぼ据え置きで(数パーセント上昇でも”焼け石に水”状態)、巷で話題の賃金上昇は医療業界で聞かれることはありません。どの病院も収益アップに躍起となり、整形外科はどの病院でも稼ぎ頭です。それは使用する高価な医療機器(人工関節、脊椎インスツルメント、骨折固定用金属)の売り上げが加算されるためです。よって手術の絶対数が増えましたが、一方、手術適応の甘さから、手術後も症状が改善しない症例が増えました。また二度と取り出せない体内金属の弊害を考えさせられる機会も増えています。

ここで大事なのは、手術選択時に検討すべき5つの因子です。

 ① 活動性・体力の自然低下
 ② 疼痛による活動性低下(a:軽い疼痛   b:強い疼痛)
 ③ 就労困難に伴う経済的損失
 ④ 
趣味・生き甲斐の喪失
 ⑤ 
認知機能の低下

手術加療のメリットに、①と⑤はマイナスとして影響し、②、③、④はプラスとして影響します。①から⑤までを加算し、それが大きければ大きいほど手術加療のメリットが増加します。

このように手術加療のメリットは、疼痛の程度だけでなく、年齢、活動性、基礎疾患、生き方などに左右されます。すなわちEBM(根拠に基づく医療)だけでなくNBM(物語りと対話に基づく医療)で考えることも肝要です。

また手術によって、改善しやすい症状と改善しにくい症状が存在します。

改善しやすい症状は、①痛み、②活動性 です。

改善しない症状は、①シビレ、②年齢からくる活動性低下 です。

また手術のデメリットは、①筋肉量低下、②再手術が困難、③感染リスク です。

  • 筋肉:手術は筋肉を切るので、筋力は必ず低下します。よって術前の筋力や活動性が術後に反映されますので、もともと筋力が低下し、活動性の低い方は思ったよう回復が困難な場合があります。
  • 特に脊椎の手術では、術後癒着が生じるので、ヘルニアの再発などは再手術がとても困難です。
  • 金属を使用した人工関節や脊椎インスツルメントの手術では、感染リスクが高まるので、術前の感染リスクの評価(糖尿病、免疫低下、感染巣や膿瘍の有無)が重要です。 

手術はこれらすべての因子を検討して踏み切るべきで、決して、医師が勧めたから、家族が勧めたからと安易に決断せず、じっくり情報を収集し、自分で決断しましょう。

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